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仙台高等裁判所 昭和42年(う)338号 判決 1968年3月26日

主文

原判決中、判示第二の1ないし12罪および同第三の罪に関する部分を破棄する。

被告人を当審認定の第一の罪(原判示第二の1ないし12の罪に照応するもの)につき罰金一三、〇〇〇円に、当審認定の第二の罪(原判示第三のに照応するもの)につき罰金二、〇〇〇円に各処する。

右各罰金を完納することができないときは金五〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

原判決中、判示第一の(一)ないし(四)の各罪および同第一の(五)ないし(九)の各罪に関する控訴を棄却する。

理由

一いずれも職権をもつて調査すると、

(一)  原判決は、判示第二の1ないし12の古物営業法違反の事実につき、<証拠略>をもつてこれを認定したものと解すべきところ、記録によると、右坂本重盛ら七名の各供述調書には、いずれも、同人らが被告人との間に判示中古自動車の各売買をなした旨、ないし同人らにおいては被告人が古物商の許可を受けているか否かを知らない旨の各供述が記載されているにすぎないことが認められる、ところで、古物営業法第六条、第二七条の規定による無許可営業の罪においては、被告人の営業行為自体についてのみならず、被告人が所定の営業許可を受けていなかつたという事実についても、被告人の自白を補強するに足りる証拠の存在することが必要であるものと解すべきである。そうすると、原判示第二の1ないし12の事実については、原判決の引用証拠中に被告人の自白を補強するに足りる証拠が存在しないことに帰するので、原判決には、右事実に関する部分について訴訟手続の法令違反があるものというべく、この違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決中右の罪に関する部分は、この点において破棄を免れない。

(二)  原判決は、判示第二の1ないし12の古物営業法違反の事実および同第三の道路交通法違反の事実につき、法令の適用を示すにあたり、判示第二の1ないし11の罪および同第三の罪と判示確定裁判を経た一の罪とが刑法第四五条後段の併合罪であり、また、判示第二の12の罪と判示確定裁判を経た二の罪とが同法第四五条後段の併合罪であるとして、それぞれ処断していることが明らかである。しかしながら、なるほど原判示第二の1ないし11の事実とそれに続く同12の事実との中間に判示一の罪にかかる確定裁判が存在するのではあるけれども、そもそも判示第二の1ないし12の所為は、その全部が一個の営業犯として一罪をなすものと解すべきであり、このように、営業犯の中間に別罪の確定裁判が介在しても、そのためにその営業犯が二個の罪に分割されるものではないのであつて、この場合、その営業犯は、右別罪の裁判確定後に終了したものであるから、右確定裁判を経た罪とは刑法第四五条後段の併合罪の関係に立つものではないと解すべきである。そうすると、原判決が、判示第二の1ないし11の事実を判示確定裁判を経た一の罪と刑法第四五条後段の併合罪の関係にあるものとし、判示第三の罪との関係で同法第四八条第二項をも適用し、また、判示第二の12の事実のみをもつて判示確定裁判を経た二の罪と同法第四五条後段の併合罪の関係に立つものとして、それぞれ処断したのは、併合罪に関する法令の適用を誤つたものというべく、この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決中、判示第二の1ないし12の罪および同第三の罪に関する部分は、この点において破棄を免れない。

(三)  原判決は、判示第三において、被告人が、判示普通貨物自動車を運転して大型貨物自動車に追従進行中、同車が停車したのでその右側方を時速約三〇キロメートルで追い抜こうとした際、後方の安全を確認せずに急に右に寄つたため、折から後方から進行してきた判示普通乗用車の左側面に自車右側部を衝突させ、もつて他人に危害を及ぼすような速度と方法で運転したものであるとの事実を認定したうえ、これにつき道路交通法第七〇条、第一一九条第一項第九号を適用処断していることに徴すると、右事実が故意犯としての同法第七〇条違反の罪にあたるとの見解を採つたものと解される。(なお同条に違反する所為は、それが過失による場合においても同法第一一九条第二項により処罰される。)ところが、原判決は、被告人の同法第七〇条に違反する右自動車運行為が、故意によるものであること、ことに他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転すべき義務発生の前提要件事実である道路、交通等の具体的状況につき認識していたことについて、これを首肯するに足りる判示を何らしていないばかりでなく、被告人が後方の安全を確認しないで急に右に寄つて運転した旨、被告人の運転行為がむしろ過失によるものであるかのような判示をもしているのであつて、つまりは故意犯としての右法条違反の犯罪事実の明示に欠ける点があるものというほかないから、原判決には理由不備の違法があるものというべく、原判決中、判示第三の罪に関する部分はこの点においても破棄を免れない。

二論旨は、被告人に対する原判決の量刑は不当に重いと主張するけれども、判示第二の1ないし12の罪および同第三の罪に関する部分については、前説示のように、いずれも法令違反による破棄事由があるから、それらの部分に関する控訴趣意に対する判断を省略し、判示第一の(一)ないし(四)の各罪および同第一の(五)ないし(九)の各罪に関する原判決の量刑の当否を検討すると、記録および当審における事実取調の結果により明らかな右各犯行の動機、経緯および態様、ことに被告人には、本件各自動車窃盗と同種の犯行態様にかかる窃盗未遂罪の前科があり、その刑の執行猶予期間中に本件各犯行に及んだものであることなどの情状を合わせ考えると、被告人の刑事責任はきびしく追及されるべきものというほかはないから、被告人の年令、経歴、家庭の状況、さらには、本件窃取にかかる自動車七台のうちの五台がすでに被害者の手許に返還され、その余の二台分については、被告人が、被害者に対し弁償金を支払うこととしてこれとの間に示談をなし、かつその金員の一部を支払つたことなど所論のような被告人のため有利に斟酌すべき事情を考慮しても、被告人を判示第一の(一)ないし(四)の各罪につき懲役一〇月に、同第一の(五)ないし(九)の各罪につき懲役一年にそれぞれ処した原判決の量刑が不当に重いものであるとは考えられない。論旨は理由がない。

そこで、原判決中、判示第一の(一)ないし(四)の各罪および同第一の(五)ないし(九)の各罪に関する部分に対する控訴は理由がないから、刑事訴訟法第三九六条によりこれを棄却し、判示第二の1ないし12の罪および同第三の罪に関する部分は同法第三九七条第一項、第三七八条第四号(判示第三の罪に関して)、第三七九条(判示第二の1ないし12の罪に関して)、第三八〇条(判示第二の1ないし12の罪および同第三の罪に関して)によりこれを破棄し、同法第四〇〇条但書に則り、さらにつぎのとおり判決する。

(当裁判所が確定する犯罪事実)

第一、原判示第二の1ないし12の事実と同一であるから、これを引用する。

第二、被告人は、昭和四〇年六月三〇日午前一一時一〇分頃、仙台市清水小路五番地先の道路上において、普通貨物自動車を運転し、大型貨物自動車に追従して進行中、同車が停車したのでその右側方を追い抜こうとした際、折から自車右後方より秋山俊教の運転する普通乗用自動車が進行して来るのをバックミラーで認めたのに、時速約三〇キロメートルの速度のまま急に右に寄つて進行し(なお、その結果同自動車の左側部に自車右側部を衝突させた。)、もつて道路および交通の状況に応じ他人に危害を及ぼさないような速度と方法で自動車を運転しなければならない義務に違反したものである。

(証拠の標目)<省略>

(法令の適用)

当裁判所が確定した被告人の各犯罪事実に法律を適用すると、被告人の右第一の所為は包括して古物営業法第六条、第二七条、罰金等臨時措置法第二条に、右第二の所為は道路交通法第七〇条、第一一九条第一項第九号、罰金等臨時措置法第二条に各該当するところ第一の罪と原判示確定裁判を経た二の罪とは刑法第四五条後段の併合罪であるから、同法第五〇条により、いまだ裁判を経ない第一の罪につきさらに処断することとし、所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内において、諸般の情状にかんがみ被告人を罰金一三、〇〇〇円に処し、第二の罪と原判示確定裁判を経た一の罪とは同法第四五条後段の併合罪であるから、同法第五〇条により、いまだ裁判を経ない第二の罪につきさらに処断することとし、所定刑中罰金刑を選括し、その金額の範囲内において、諸般の情状にかんがみ被告人を罰金二、〇〇〇円に処し、同法第一八条により、右各罰金を完納することができないときは金五〇〇円を一日に換算した期間被告人をを労役場に留置すべきものとし、主文のとおり判決する。(有路不二男 西村法 桜井敏雄)

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